特集

新駅ビル・九州新幹線全線開通まで2年半
博多の街が動き出す――
初の社会実験「はかたんウォーク」密着レポート

  • 0

  •  

■博多まちづくり推進協議会とは-

 「博多まちづくり推進協議会」の前身は、昨年4月に立ち上げられた組織準備会。20を超える企業や団体と周辺自治協議会、学識経験者と福岡市で同協議会の設立に向けて準備を行ってきた。3つの部会を設け、シンポジウムやワークショップ、先進事例の視察などを行い、今年4月に正式に発足。
博多駅周辺の約110の企業や団体が会員となり、本格的なまちづくりのガイドライン策定に向けて動き出した。

博多で街づくりフォーラム-「博多まちづくり推進協議会」発足へ(博多経済新聞)「博多まちづくり推進協議会」発足-キックオフで清掃活動も(博多経済新聞)

■社会実験「はかたんウォーク」の開催に至るまで

同協議会の執行機関には社会実験のプロジェクトチームが置かれ、8月には同協議会会長・幹事と自治協議会会長、大学教授と福岡市を中心に、「博多駅地区社会実験実行委員会」が設立。2度の協議を重ね、歩行者を中心とした社会実験の実施計画をシンポジウムにて発表、社会実験は「はかたんウォーク」と名付けられ、実施には30を超える企業が参加。「来街者にとってわかりにくい駅周辺の複雑な街区に、よりホスピタリティを持たせるための施策」「自転車と歩行者の混在を抑えた歩きやすい空間づくり」そして「環境意識を啓発し、環境に優しい移動手段の提案」の大きく3つのコンセプトに分けて実施された。

九大院生らが博多の可能性を探る-博多まちづくり推進協議会で(博多経済新聞)博多駅地区社会実験「はかたんウォーク」開催決定-14項目実施へ(博多経済新聞)

■通りに「わかりやすさ」と「にぎわい」を

 社会実験が行われた25日・26日には、西日本シティ銀行本店前に本部が置かれた。多くの来街者が配布された社会実験のチラシを興味深く見入る姿が見られ、社会実験の関心の高さをうかがわせた。天神までの回遊軸の形成の中心となる「はかた駅前通り」には計64枚のストリートバナーが掲げられ、ワークショップで名称を決めた通り名のサインや街案内サインを設置。名称の浸透度は今後詳しく検証していく予定だというが、街案内サインを覗き込む来街者に幾度となく遭遇したので、歩行者に回遊性を持たせるという意味では非常に役に立っていたように思う。

 また、博多口交差点ではパフォーマーが芸を披露し、駅前通りでは黒ずくめの男がサプライズパフォーマンスをするなど、駅前通り周辺はにぎわいを見せた。25日には、例年キャナルシティを起点にスタートしていたハロウィンパレードが地域イベント格上げされ、明治公園~駅前通り~キャナルシティ~川端商店街~博多リバレインまでを600人がパレード。道行く人たちが写真を撮るなど、通りを大いに盛り上げた。

博多駅周辺の通りに名称を-博多まちづくり推進協がワークショップ(博多経済新聞)博多駅周辺で11の通り名が決定、社会実験実施へ-まちづくり推進協(博多経済新聞)キャナルハロウィーンパレード、規模拡大へ-600人の参加見込む(博多経済新聞)

■通りに「歩きやすい」空間を

 さらにこの社会実験のひとつの目玉でもある、歩行者と自転車の分離を実施。博多口交差点から博多警察署入口交差点まで、片側2車線の車道のうち1車線を、幅3メートルの自転車専用レーンに設定。交差点には警備員を約80人配置し、歩行者との分離を行った。実際に歩行者に聞いてみたところ、安心して歩けるとの声も聞かれ、「期間中は事故もなく、快適で安全な空間が確保できた」(実行委員会事務局)という。

 また渋滞が慢性化している筑紫口周辺の対策として、筑紫口のタクシープール以外に県東総合庁舎駐車場に第2タクシープールを設定、見違えるように車がスムーズに流れていた。筑紫口交差点や筑紫口通り(竹下通り)などでも渋滞などはなかった一方で、第2タクシープールはタクシーが溢れ、周辺を周回せざるを得ない運転手らは、手続きに煩わしさを感じていた部分もあるようだが、タクシーについては一概に言えるものではないので、今後も本来のスムーズさを維持する方法を期待したい。

■環境と健康にやさしい移動手段の提供

 環境と健康に優しい移動手段として設定された電動自転車のレンタサイクルも、平日はビジネスマン、休日は県外からの観光客などにも好評だったという。担当者は観光案内も含めて丁寧に応対していたが、ヤフードームや福岡タワーなどの距離感を伝えるのには苦労していたようだ。また本部前からはベロタクシーも約20便前後発着し、にぎわいに貢献する側面も見られた。

■随所で笑顔とにぎわい 

 25日の土曜日は、御供所ライトアップウォークと博多灯明ウォッチングが行われ、これに連携する形で博多駅前通にはLED式のキャンドルが1,500本設置された。事前にキャナルシティで募集していたもの以外に、当日の来街者もキャンドルを入れる紙袋に絵やメッセージを書きこめるコーナーを3カ所設け、女性や子どもを中心に書き込む姿が見られた。それぞれの想いがこもったキャンドルが歩道を彩ったほか、駅から御供所地区までの大博通りには、同協議会と博多遊学プロジェクトの協同で、同じくLEDのキャンドルを設置。ライトアップに向かう人たちの足元を照らした。

博多の寺社をライトアップ-「御供所ライトアップウォーク」開催迫る(博多経済新聞)御供所ライトアップウォーク・東長寺本堂(関連画像)御供所ライトアップウォーク・東長寺六角堂(関連画像)博多灯明ウォッチング・博多高校校庭の地上絵(関連画像)博多灯明ウォッチング・正福寺での稚児舞の様子(関連画像)

 一方26日は、天気がやや崩れたこともあって、前日に比べて歩行者・自転車とも少なめ。自動車も含めて行っている交通量調査では「天気によるサンプルも取れる」との意見も。夕方には雨も止み、博多口交差点の2カ所に設置されていたフラワーコーナーのコスモスは来街者に配られ好評だった。

 複雑に入り組む同駅周辺の街区。回遊軸と位置づける駅前通りは恒常的に南側のほうが通行量が多く、オープンカフェやお休み処は、賑わいを見せた反面、一部の場所は人があまり利用しない場所も見受けられた。通りにはランドマークや店舗が少ないこともあり、にぎわいの創造にはより一層工夫が求められる。実行委員会の事務局でJR九州博多まちづくり推進室の中野量太室長は「(施策の)集約やアンケートの集計結果が出た上で、しかるべき方法をとっていきたい」としながら、「今回の社会実験にも、いろいろなヒントなりアイデアが出てきていると思う。今後のまちづくりに反映させられるようにしていきたい」と話す。

■今後のまちづくりの動き

 社会実験の結果は現在実行委員会で効果分析や施策の評価を行っている最中。成果の取りまとめは来年1月になる予定で、実行委員会の2月のシンポジウムで発表される。今後継続性や公益性を確保できる施策や、ガイドラインの策定づくりや報告、提言と言う形でまちづくりを推進していく。

 一方同協議会では、5月から毎月1回、駅周辺を清掃する「クリーンデイ」を開催しているほか、「博多の未来予想図」と題して博多の未来に対する思いや意見を募集しており、今後のまちづくりに生かしていきたい考え。12月5日から1月18日まで、はかた駅前通りと筑紫口エリアを同協議会で、大博通りと博多口エリアについてはビルオーナーらと協同クリスマスイルミネーションを点灯するほか、今後ともまちづくりのイベントに協力していくとしている。地域コミュニティの多い博多地区だが、同協議会は積極的に参画していく姿勢を見せている。

博多駅クリーンデイの様子(関連画像)博多まちづくり推進協議会

 博多のまちづくりはまだ始まったばかり。今後は博多駅からキャナルシティまでだけでなく、その先の天神までの回遊軸を形成できるか――博多のよさはそのままに、福岡が一体となって、首都圏や関西など日本中の都市にも負けない、より魅力的な街になっていくことを願い、今後も福岡・博多の街づくりを追いかけていく。

写真・文/編集部 水間健介

  • はてなブックマークに追加

ピックアップ

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース