日本での公演は、1983年に東京・西新宿のテント式仮設劇場で初演された。1年間のロングラン公演以来30年、計9都市で延べ20公演が行われ、日本での上演回数はブロードウェー公演の7485回を超える8600回を記録した。
福岡では、アジア太平洋博覧会(よかトピア)が開催された翌年の1990年、シーサイドももちに猫の光る眼を描いたテント式仮設劇場「キャッツ・シアター」を設置。237公演、23万5000人を動員した。1998年には、演出や振付などをアレンジした初の「常設劇場版」として福岡シティ劇場(現・キャナルシティ劇場)で約10カ月に渡って上演、29万人を動員した。
舞台は都会のごみ捨て場。強さや行動力などひときわ光る本質を持ったもっとも純粋な猫「ジェリクルキャッツ」に選ばれることを夢見て、24匹の個性溢れる猫は一夜限りの舞踏会に集う。プレイボーイでメス猫にモテモテな「ラム・タム・タガー」、若い猫のリーダー的存在の「マンカストラップ」、ミステリアスな魅力を持つ「タントミール」、世話好きなおばさん猫「ジェニエニドッツ」、鉄道好きな「スキンブルシャンクス」、そして年老いた娼婦「グリザベラ」…。グリザベラが今の孤独に耐えながらも美しかった過去を歌う「メモリー」は同作を代表するナンバーだ。(写真右上=1990年 百道浜・福岡、同右下=1998年 福岡 ともに撮影:山之上雅信、同下=会見の様子 撮影:編集部)
「キャッツはミュージカルの王様。これを見たら間違いない」と太鼓判を押すのはラム・タム・タガー役候補の芝清道さん。福岡県久留米市出身の芝さんは1985年にオーディションに合格し、1990年のももち公演で「初めて大役をもらった」とラム・タム・タガーを演じた。「キャッツに出ることがステータスのような、出演している俳優は殿上人のような…キャッツはそんな偉大な作品」と芝さん。念願のラム・タム・タガー役を手に入れようと必死に自分を追い込んで頑張ったという。
そして手にした大役。当時を振り返ると「今よりずいぶんと年齢的には若いが本当に体力面がきつく、ただひたむきにがむしゃらに全力で演じていた」と芝さん。23年前は、4足歩行など慣れない体勢に足のじん帯を切るケガを負い、15年前には腰も痛めたという。「足は手術よりも千秋楽を優先させ、青い顔してやりました」と振り返る。「当時は本当に下手くそでした。飲んで忘れて次の公演を頑張る。その繰り返しで(笑)。体は52歳の今の方が断然動くし、体力維持は努力している」と自信をのぞかせる。(写真左・下=撮影:下坂敦俊)
舞台には、高さ36センチの空き缶やご当地ならではのごみを施し、猫から見える世界を再現したセットが組まれる。15年前の公演にも出演した福岡県春日市出身のタントミール役候補・高倉恵美さんは「ステージをまだ見ていないので、どんなご当地ごみが登場するのか楽しみ」と笑う。「キャッツは(自身にとって)大きい壁を乗り越えるような作業。キャッツに出会って自分の成長がある。観客は舞台のどこを見ていいのか、いろいろなことが混ざり合う、贅沢なミュージカル」と話す。
開幕は4月20日。「とにかく音楽が素晴らしく、舞台装置も面白い。劇場に足を踏み入れた時からワクワクするはず」と芝さん。「24匹の猫がいるように、1万人いたら1万通りの感じ方がある世代を超えて楽しめる作品。ぜひ劇場にいらして下さい」。(写真=すべて撮影:荒井健)
取材・文/編集部 秋吉真由美