■観光客の駆け込み寺
白を基調とし、「和」をテーマにしたカフェの店内には、ハングルで書かれたポップとともに九州の名産が並ぶ。同店を出店したホスピタブ
ル・松清一平社長は、福岡のテレビ局で勤務していた際、通訳を通して取材した番組が面白くなかったことをきっかけに韓国語の勉強を開始。同社を
2007年に設立した。
同社には松清社長のほか、韓国語が話せるスタッフが
6人おり、日韓交流ブログサイト「99s(キューキューズ)」や韓国人観光客向けのグルメマップ「マッチブキルラジャビ」などを展開。韓国人ブロガーのモニターツアーやソウルでの辛子明太子のPRイベント、韓国人ブロガーと共同で福岡市内の屋台メニューを韓国語で制作するなど、国内のサービス・商品の販売促進なども行っている。
韓国語版の九州各地の観光案内パンフレットなどを置いたカフェ店内はフリー
Wi-Fi空間。コーヒーを注文した利用客にはPCを貸し出し、情報を調べられる環境を提供する。必要であれば韓国語が堪能なスタッフによる案内も受けられるという。「これだけインターネットの時代と言われているが、やはり最後にはアナログの手がいる。観光客の駆け込み寺のような場所が必要」。
観光案内所との違いは「ズバリ座れるところ。また、パンフレットをただ置いているわけではなく、韓国語が話せるスタッフによる現地のコアな情報が得られるところ」と松清社長。「案内所での立ち話、見知らぬ土地で余裕がない状態で聞いた情報には必ずといっていいほど不備がある。店で食事しながら、店員のおばちゃんに聞いた情報の方が、正しいし、忘れない」という旅行好きという自身の経験を生かした作りにした。
■福岡を体感する場所へ
「韓国人に大人気」というカレーをはじめ、九州の名産品や雑貨など約
50点をそろえる物産コーナーも設け、周辺住民やビジネスマンなどの利用も見込む。「PRしたいが、広告費を出せない企業のプロモーションスペースになれば」とも。ユーストリームの配信設備もあり、店内でイベントなども予定する。
「飲んでいた韓国の屋台で電子辞書を忘れたことがあり、あきらめていたが、次の日に店を訪ねると保管してくれていた。さらにその日にサービスまでしてくれて…」と旅先での思い出を振り返る。撮影で訪れた宿もない韓国の田舎では、アポなしで自宅に泊めてもらったこともあったという。
「そんな旅先での思い出が生まれる場所にしたい」と松清社長。「地元の人が飲んでいるときに、ふらっと観光客が入ってきたらおもしろい。『まぁ、飲めや』と、隣の人とすぐに仲良くなる屋台のような福岡の雰囲気を体感できる、現地の人と旅行者が集える場所になれば」。
文・写真/編集部 秋吉真由美