特集

滑走路ウオーキングや空港内のバスツアー
「空港のテーマパーク化」を目指す福岡空港

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■予算削減でアイデア勝負に

他県の空港では見られないイベントの数々。実は、低予算の中でひねり出した利用促進策が原点だ。「ここ数年の税収入減に加え、東日本大震災の発生により仙台空港の復興資金へと回され、利用促進の予算が削減。必然的に低予算の利用促進策を絞り出しています」と話すのは国土交通省・大阪航空局・福岡空港事務所・広域空港管理官の大田正朗さん。


大田さんは、航空会社や空港ビル会社などから成る九州ブロック航空利用促進協議会の会長、福岡空港利用促進協議会幹事長を務めており、福岡空港をはじめ、九州の各空港の利用促進を担当。空港の滑走路を歩く体験ができる「ランウェイウォーク」や空港内の制限区域を巡る「プレミアムバスツアー」などを企画している。


自転車をこいでは空港へ出向き、フェンスにかじりついて飛行機を眺めているという飛行機大好き少年だったという大田さん。少年時代の夢がイベント企画のヒントになっているようだ。


■滑走路をウオーキング

今年7月30日、8月6日と2度に渡って開催された滑走路を歩く体験イベント「福岡空港ランウェイウォーク」。以前より、滑走路に入ってみたいという声も多く、ニーズがあるとは認識していたが、セキュリティーチェックや案内スタッフ、参加者を滑走路へ運ぶバスの資金など予算の問題、開港前のトラブルで当日の運航に支障をきたすリスクの高さから、先延ばしにしていた企画だったというが、「チャリティー活動をする人に悪い人はいない」と参加者の善意を信じ、参加費を震災の復興に充てるチャリティーイベントとして開催にこぎつけた。


参加費もできるだけ低価格に設定するため、バス代や運営費は航空会社にスポンサーを募った。「最初はとにかく予算がないので、協力してくれる人を探し回った」と振り返るが、普段、滑走路に入ることができる空港勤務者は全体の2割程度。史上初の企画に協力を名乗り出るスタッフも多く、滑走路に向かうバスは満員になる人気ぶり。「30年以上のベテラン勤務者も滑走路に入るのは初めてと興奮気味でバスは東京のラッシュアワー状態。笑えました」という。


早朝の開催にもかかわらず、一般利用客に参加を呼びかけると東京や名古屋など県外を含む計1432人の応募が集まり、抽選で選ばれた60人が参加。参加者は2800メートルの滑走路のうち約1000メートルを歩く、貴重な「ウオーキング」を大いに楽しんだ。「滑走路に寝転がり、素直な質問をぶつけてくる子どもの笑顔を見ると苦労も吹き飛びます」。


続いて8月28日には空港内を見学できるプレミアムバスツアーも催行。福岡空港発着機に搭乗し、空港内のショップや駐車場で計3,000円以上の利用者を対象にしたツアーにもかかわらず、計80人の定員に1000人を超える応募があったという。1日2回、約2時間の行き先を伝えないミステリーツアーで参加者を楽しませた。


■空港をテーマパークに

今年5月には飛行機から景色を見る楽しさを形にした、九州上空写真コンテスト「空から九州キャンペーン」も実施。「空からのいつもと違う視点で景色を楽しんでほしい」と九州上空の飛行機から撮影した写真を募集。大田さんの知人である航空写真家・チャーリー古庄さんが審査委員長として協力。選出した優秀作品は航空会社10社の航空機を描いた切手「九州の翼」の切手シートの台紙に採用された。


昨年夏には、国内線第2ターミナルビル4階送迎デッキに福岡空港初のビアテラスがオープン。福岡空港ビルディングの主催で約2週間の期間限定だったが、予約が取りづらいほどの人気に。2回目の開催となる今年の夏は席数を150席増やし、3カ月に延長して実施した。


ビアテラスの人気は「博多や天神から近い、空港の立地も背中を押している」と大田さん。「地下鉄ですぐに行けることで、2次会利用もできる立地は福岡空港の強みだ」という。


好立地を生かし、商業施設のようなエンターテインメントスポットを目指す。「空港は観光資源の一つ。いろんなイベントを仕掛けることで大人も子どもも空港に親しんでもらえれば」と大田さん。「熱狂的なファンが多い鉄道や電車に比べ、飛行機は日々乗るものではないが空を飛ぶことは人類始まっての欲望の一つ。それを叶える飛行機をぜひ、身近に感じてほしい」と笑顔を見せる。


取材・文/編集部 秋吉真由美





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