■ついに「JR博多シティ」開業
3月3日に開業した新博多駅ビル「JR博多シティ」(福岡市博多区博多駅中央街)。九州初出店の百貨店「博多阪急」のほか、「東急ハンズ」やシネコン「ティ・ジョイ」などが出店する「アミュプラザ博多」で構成する。延べ床面積は約20万平方メートルで、地下3階・地上10階建て。
●アミュプラザ博多
地下1階~10階、売り場面積は約5万7,000平方メートル。テナントは九州初84店、福岡初6店、計229店舗が出店する。初年度売り上げ見込みは約300億円。
主なテナントは、
1~5階=「東急ハンズ」、地下1階=アメリカ発人気ドーナツ店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」など、8階=約800坪で展開する書店「丸善」、九州初の鉄道模型専門店「ポポンデッタ」など、9階=シネマコンプレックス「T・ジョイ」「JR九州ホール」、9~10階=レストランフロア「くうてん」、屋上庭園「つばめの杜ひろば」には展望スペース、鉄道神社も設ける。
注目は九州初出店のアメリカ発ドーナツ店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」(地下
1階)。米国で1937年に創業し、2006年に12月に新宿に国内1号店を出店した。同店では、九州新幹線「さくら」にちなんだ、博多限定ドーナツ「HAKATAドーナツ」などもそろえ、開業初日には開店と同時に1時間待ちの列ができるほどの人気ぶりだ。
地上
25メートルの同ビル5階部分の大博通り側の壁面には九州新幹線「つばめ」などのデザイナー・水戸岡鋭治さんがデザインを手がけた同ビルの顔「博多大時計」が設置されている。長針3.6メートル、短針2.2メートルで直径は約6メートル。時計の裏側にはイタリアンスタイルカフェ「エスプレッサメンテ イリー」が位置しており、その「大時計」越しに一望できる大博通り、博多港の景色が話題を集めている。
9階・10階にはレストランゾーン「シティダイニングくうてん」。ゾーン名称は天空に近いフロアであることから「空(くう)」「天(てん)」、「食うてん」(食べてみて)、「9(くう)」「10(てん)」などに由来。「世界の心。日本の技。博多の旬。」をコンセプトに九州初出店29店を含む46店舗が出店している。フロアの内装は「光と緑の大回廊」をコンセプトに壁や床には博多土塀など九州の歴史に関連する素材を取り入れた。
各階のトイレもフロアコンセプトに合わせて設計。6階・9階には授乳室を設けた子ども用トイレ、8階には男女ともに大博通りを望むことができるガラス面を設けた「絶景トイレ」を設けた。
営業時間は、アミュプラザ博多は1階~8階=10時~21時、9階・10階のレストランフロア=11時~23時、地下1階=8時~21時、1階=8時~22時、9階のT・ジョイ博多=9時~24時、屋上=10時~23時。
1~
5階に出店。売り場面積は約5,000平方メートル。1階=旅行用品、レインウエアなど。2階=アウトドア小物、バッグ、自転車、財布・パスケースなど。3階=キッチン用品、健康グッズ、メンズケア用品、美容グッズなど。4階=インテリア、塗料・大工道具・レザークラフト、アクセサリーパーツなど。5階=ステーショナリー、バラエティーグッズ、ベビーギフトや育児グッズなどをそろえるコーナー「こどもはんず」など。
九
州各地のグッズや土産物などをそろえる「はかた・び」コーナー(
1階)や「大濠公園で活動する人をイメージした」という商品を展開する「大濠スタイル」コーナー(2階)、九州各地の調味料を集めた「九州の食卓。」コーナー(3階)など「九州色」を強く出した商品展開で約10万アイテムをそろえる。
営業時間は10時~21時。
●博多阪急
地下
1階~地上8階。店舗面積は4万2,000平方メートル。メーンターゲットは、雑誌「Hanako」世代の50歳前後の女性「ハナコ50」と、働く25歳前後の女性「OL25」。日本初11ブランド、九州初83ブランドを含む660ブランドを展開。初年度売り上げは370億円を見込む。
地下
1階=食品フロア。1階=アクセサリー・化粧品・服飾雑貨・メガネなど。2階・M3階・3階=「20代の女の子のための百貨店」をテーマにしたフロア「HAKATA SISTERS」。4階=「OL御用達ワールド」。世界初出店の「ELLE CAFE(エル・カフェ)」も出店。5階=「ハナコおしゃれワールド」。6階=紳士服・服飾雑貨。 7階=「母・娘で楽しむリビング用品」「こどもの百貨店」。8階=アクティブシニア向けフロア「チャーミングプラザ」。各フロアでセミナーやワークショップを行うスペース「コトコトステージ」を設けた。
特にこだわりの部分は「
HAKATA SISTERS、食品フロア、チャーミングプラザ」と同店の柳澤興平店長。「HAKATA SISTERS」は2階には「バーバリーブルーレーベル」「スウィングル」などエレガンスをテーマにしたブランドを展開。3階は中央に約4分の1の広さとなる約420平方メートルの編集売り場を設けたほか、M3階にはカフェ、服飾雑貨のほか、動画配信サービス「Ustream」で生中継できるスタジオを設けた。
地下
1階の食品フロアは、堂島ロールで人気を集める「モンシュシュ」など九州初や百貨店初、博多阪急限定が48店舗、計123店舗で構成。大阪「阪神名物いか焼き」などの「ご当地グルメ」をそろえるイートインコーナー「うまか食堂」、食に関するセミナーや料理教室を開く「うまか研究所」も設けた。リンゴのモチーフを掲げた休憩所「りんごの下」前では、同店スタッフで結成した「博多キッチンバンド」がまな板や包丁、フライパンなどを使った演奏を披露するステージも併設。
「テナントに関しては今後修正もしていくが、かなり戦える店になった。買いまわりが期待できる」と柳澤店長。プレオープン招待や限定イベントなどの実施で獲得に力を入れてきたカード会員については当初掲げていた開業までに20万会員獲得という数字は15万に下方修正したものの「ほぼ達成できる。年内に30万会員、3年後に50万会員は当初の目標通り」とも。
営業時間はフロアターゲットのニーズに合わせてフロアで異なる。地下1階~4階=10時~21時、5階~8階=10時~20時。地下1階の博多1番街は7時~23時。
■長蛇の列、開業は1時間前倒しに
3月
3日はJR九州の唐池恒二社長、高島宗一郎福岡市長、宝塚歌劇団の夢乃聖夏さん、白華れみさんらがテープカットに駆け付け、開業を祝福。CMに出演しているアヤカ・ウィルソンさんも参加し、盛大にセレモニーが行われた。
開店前には
約
1,300人の長蛇の列ができ、1時間繰り上げで9時に開業。唐池社長は「駅ビル最大級の広さでテナントは日本一の顔ぶれ。博多が九州中から親しまれる街になれば」。高島市長は「皆が待っていたJR博多シティの開業。これからは天神とJR博多シティ、ダブルのエンジンで九州・アジアを引っ張る街にしていきたい」。
3月12日の九州新幹線の全線開業では、同11日に起きた東日本大震災に考慮し、開業式典は中止。ひそかな門出となった。博多のまちづくり活動を行ってきた博多まちづくり推進協議会も「新・博多」をさらに盛り上げようと各種イベントを企画していた。ライブイベントなど一部中止したものの、予定通り開催するものもある。
「博多の魅力を知って欲しい」(同協議会の西島義久さん)と櫛田神社や川端ぜんざいなど各地をイメージしたオリジナルの絵柄のスタンプを計26カ所に設置する「はかたんウォーク・福博花しるべスタンプラリー」や、「博多といえば『麺』」と博多駅周辺の27店舗が参加するラーメン、うどん、そばの食べ歩きイベント「ちょい食べ 博多んグル麺」(5月15日まで)を実施する。
また、新幹線の全線開通で観光客の増加を見込み、博多口駅前広場とキャナルシティ博多に「はかた観光案内ボランティア」の配置や2010年11月に東大邱~釜山間の韓国KTX京釜線新線、同年12月には東北新幹線が開業したことにちなみ、博多・釜山・青森の3地域によるシンポジウム「九州新幹線全線開業記念シンポジウム~近づく世界、広がる世界~」を4月12日、JR九州ホールで開催する。
そのほか、歴史探訪やスイーツ・パン巡りコースなどを紹介した「博多まち歩きマップ」や、WeLove天神協議会と共同で製作した「天神・博多まち歩きマップ」など回遊性を高めようとを配布する。
「開業の瞬間だけでなく、息長く博多を楽しんでほしい」と長期に渡ってイベントを実施。「博多=オフィス街のイメージだが、この博多が生まれ変わるタイミングを機に観光客の回遊性の向上はもちろん、ビジネスマンがいかに楽しめるかの平日の仕掛けも考えていきたい」と西島さん。「お父さんが働いている博多ってなんかカッコイイね、と言われるような愛される街にしていきたい」。
いよいよ動き出した博多の街。震災の影響で盛大な開業とはいかなかったが、新しさと懐かしさが融合する街に変わった「新・博多」に期待したい。
取材/編集部 秋吉真由美